高校サッカー・感動と感謝
「感動するサッカーとは感謝する心から生まれる」 この言葉は、4,5年前に子供達に話したフレーズである。
人は皆、それぞれの生まれ育った環境、ポリシー、フィロソフィーがあり、 人生がある。
だから、何が正しいかなんて考えた事も無いし、それぞれの生き方に否定してはいけないし、どんな生き方も、全てが正解だと思う。
その上で私は、日々感謝の気持ちを忘れずに過ごし、小さな出来事にも感動できる方は素敵な人生を送っておられると思う。
山頂からの壮大な景色で思わず息を呑むとき。
綺麗な花に、目を瞑って思わず鼻を近づけるとき。
数年ぶりの仲間との再会、笑顔で肩をたたきあうとき。
満開の桜を見ながら挽きたての珈琲を飲み読書するひととき。
子供の入学式や卒業式に出席しているとき。
子供のお弁当を早朝に作っているとき。
子供の送り迎えを車内で待っているとき。
家族で食卓を囲むだけで、今日一日が素晴らしい一日に思えてくる。
私は子供達に時々質問することがあります。
「感動するサッカー」ってどんな試合だと思う? 子供達からは 「負けている試合を逆転して勝った時」 「強いチームに勝った時」 「優勝した時」 「俺が点を決めて勝った時(だって親が喜んでくれると思うから)」 そんな答えが返ってきます。
「全力で、一生懸命やっていなくても、勝てばどんな試合も感動すると思う」?
「負けた試合では感動はしないかな」?
「じゃあ負けた試合で感動する試合ってどんな試合かな」?
「毎日、適当に練習して、監督さんも不在が多くて、お父さんやお母さんもあまり関心なくて、君もそんなに勝ちたいと思っていない試合に勝った試合ではどう」?
努力の結果としての喜びや、予測や想像を越えた素晴らしい事を感じられた時に感動が生まれるのだと思います。
先日も教え子が高校合格証書を持参して合格報告に来ました。
彼は、ジュニアユース時代は公式戦に出場する機会は少ない選手でした。
彼には、「大人になったら成功者になれよ」と伝えました。
成功者とは、大金持ちになるとか、有名人になるとか、社長になることではないとも伝えました。
ジュニアユース時代、公式戦にあまり出られず悔しかった、それでも最後までしっかりと努力をしてきたという人間性は君の成功者になるための財産であると伝えました。
大人になったとき、不器用でもコツコツと誠実な人を評価できるようになって欲しい。
同様な立場の人の気持ちがわかり、人を励まし、勇気づけられる大人になることが大切だと伝えました。
今は、サッカーが上手い仲間が輝いているように感じる時もあるかもしれないけれど、それはサッカーだけの事であって、本当に小さな一部分。
人生はサッカー以外の事の方が果てしなく沢山ある。
君が輝ける事は無限にある。
サッカーにおいて沢山失敗しても負け続けても主役でなくても問題ありません。
人生において、君は主役であるのだから、その分、楽しい事が沢山あります。
誠実に生きていけば、感動する場面に沢山出会えると思います。
ポジティブな出来事で心が動かされる事は、温かい心がどんどんあなたの心に入っていきます。
知らぬ間に、日常に感謝する心の持ち主になっていると思います。
それこそが「大人になったら成功者になれよ」の真意です。
感謝する気持ちは相手に伝わります。
感謝されれば、相手も嬉しくなります。
相手も、もっとよくしてあげたいと思います。
お互い、なんだかいつも気分がよくなってきます。
お互いを高められる関係に発展するかもしれません。
私は、サッカーの試合においても、感謝する気持ちがみんなにあったら素敵だと思います。
味方も相手も両チームのコーチ達も、審判も、そして応援に来ている親達も、みんなサッカーを通じて心が磨かれ、とても大きなポジティブな活力を生み出すからです。
だから私は試合中のネガティブな行動は、コーチも選手も観客席からも好きではありません。
きっと皆さんもそうだと思います。
相手チームや審判に対してのクレームや言い訳のネガティブな声は悲しくなります。
サッカーは戦いだから、選手と一緒に戦っている。という大人もいるでしょう。
熱くなっているから当然と思う大人もいるでしょう。
指揮を高めるパフォーマンスだという大人もいるでしょう。
エンタテインメントでもあるプロや大人の世界であれば一概に悪いとは思いません。
私は育成とプロは切り離さなくてはいけないと思っています。
育成年代は試合の勝敗が全てではなく、それは日頃の子供達の成長、ステップアップの場であり、人間としての人格形成を育む場の役割があるからです。
だから、私は指導者がプロや大人を教えているのか、育成年代を教えているのかを自覚している必要があると思っています。
組織トップがしっかりとそのことを認識して指導者を教育していく必要もあると思います。
そうすれば、今以上に日本代表もJリーグも感動するサッカーで日本を豊かにしてくれると思います。
高校生のみなさん。
「感動するサッカーとは感謝する心から生まれる」と冒頭で書きました。
感動するサッカーとは、選手全員が親や指導者や周りの方々に感謝の気持ちを持って、親や指導者は選手全員を信じ、勝利に向かって、心が一つになった時に生まれるものだと思います。
感謝する心があれば、感動する人生があると思います。
感謝の心をあなたの人格に、感動をあなたの人生に持ち続けてください。
感謝の心が人を育て、感動の心が自分を磨きます。

