山梨県 トピックス 土橋 功(どばしいさお)氏 インタビュー

土橋 功(どばしいさお)氏 インタビュー

今回のインタビューは2回に渡り、インタビュアー小野文子(おのあやこ)が学生時代よりお世話になっているお兄ちゃん的存在の土橋功(どばしいさお)さん(元ヴァンフォーレ甲府選手、教員を経て現在中国でサッカー指導者育成 昭和50年生まれ現39歳)に、これまでの指導者経験や現地にいるからこそ感じた他国との違い、今後の日本の高校サッカーについてざっくばらんに伺いました。Vol.1とVol.2と2回に分けて掲載します。

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Vol.1 指導者のきっかけ~日本と中国の環境と考え方の違いとは・・・。

小野:本日は宜しくお願いいたします。早速ですが、指導者はいつから始めましたか?

土橋:25歳で現役を引退(ヴァンフォーレ甲府:以下VF)してからだね。早いな・・。

小野:指導者になろうと思ったきっかけは?

土橋:サッカーが好きだし子供も好きだから、指導者にはずっと興味があって。
そしたらVFで声をかけてくれたんだよね!それが指導者としてのスタート。

小野:はじめはVFのJrユースからそして、現在までの経歴は?

土橋:VFで6年間 Jrユースの監督、トップチームのアシスタントコーチをやらせてもらいました。それからスペインに指導者留学して、フォルトゥナSCに2年間、教員として7年間サッカー部の顧問をしてきました。今は中国スーパーリーグの杭州緑城というチームでU15チームを指導しています。
他には県内の保育園、幼稚園に巡回指導もしてきたり、47FAチーフインストラクターとして指導者育成に携わってきたり、JFAが認定するモデル地区トレセンを行ってきたりと様々な活動もしてきたよ。

小野:初めて指導し始めた時と今の指導の方法や考え方は変わってきたことってありますか?
土橋:全てが変わってるよ。サッカーは常に進化しているし、それによって指導方法も常に進化しているからね。
初めは自分の経験だけで指導していて、でもライセンスの取得や研修に行くと指導の深さを知り知識が付いてきて、それに今度は成功や失敗を積み重ねることで経験値が増えてきて。
それと世界に出て学べたことも大きい。スペインの一部リーグ、ラシンサンタンデールというチームで園児からトップチームまで色々なことを体験させてもらったんだ。
そして、教員としての7年間はサッカーだけしか知らなかった自分にとって最も内容の濃い時間だった。担任をして卒業生を出して・・・。色んな生徒や保護者がいたな~。
生徒との関わり方であったり、保護者との関わりであったり、もちろん教育とは何か、人を育てるとは何かということを様々な角度から学ぶことができて考えられるようになったよ!
だから最初に比べたら指導方法も考え方もかなり進化しているよね!
常に学んでいくこと。毎日の積み重ねが大切で、今も進化している途中!!
そうすると、学院(山梨学院大学付属高校)でサッカー部の監督をしていた横森先生が全国優勝したことは、本当に凄いことだと思う。
人間力もすべて含めて。

土橋: このインタビュー大丈夫?なんか心配なんだけど…。

小野:大丈夫、ちゃんとレコーダーで(スマホの録音機能…。)録音してますよ。

土橋:そういうことではないけど・・。

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中国の杭州緑城(こうしゅうりょくじょう)U15

小野:現在は中国に行って指導者として頑張っているということですが?

土橋:中国の杭州緑城(こうしゅうりょくじょう)というチームでU15を指導してます。文化も習慣も違うところで生活し指導するってことは大変なことが多すぎる!でも、それを乗り越えようとする作業は楽しいよ!
誰でもできる経験ではないし、この経験は自分にとって大きな財産、キャリアになると思っているよ。
(※杭州緑城は元日本代表の岡田武史氏が監督を務めていたクラブ。岡田氏は現在、同チームの育成アドバイザーを務めている)

小野:日本で言うと?

土橋:J1の下部組織のJrユースを担当しているよ。年齢的には13~15歳。

小野:日本と中国の環境の違いは?

土橋:サッカーをする環境が凄い!私がいるチームだとグラウンドが天然芝と人口芝と合わせて10面はある。その敷地内にクラブハウスがあって食堂、プール、体育館、選手やスタッフなどが宿泊できる施設があって・・・。こんなに大きな規模のところって日本にはあまりないでしょ?この前遠征で行った中国の別のチームは育成のグラウンドだけで20面はあるんだよ。トップチームはまた違う敷地にグラウンドや施設があるという・・・。

小野:え、凄い!中国やっぱり土地が広いのかな?

土橋:確かに中国は広い!
育成だけでも20面あって、宿舎があって食堂があって公園があって、他チームが宿泊できる宿舎まであって…そういった設備面では凄いよね。

小野:逆に育成にそれだけ投資している中国って末恐ろしい…。伸びそうですね。

土橋:環境は素晴らしい事は間違いない。それに学校もあるんだよ。専門学校じゃなくてね。

小野:え?クラブチームに学校があるのですか?

土橋:そうそう、普通の学校をクラブが持っている。小学1年生から高校3年生までの少年たち400人くらいが暮していて、一般教養を学べる学校があるんだよ。みんな親元を離れてそこで生活していて・・・。凄いでしょ!それもすべて同じ敷地内にあるなんて!

小野:ほ~。それは凄いですね!益々強くなりそうな予感。

土橋:だから、環境(グラウンド・クラブハウス・宿舎・学校等)はパーフェクト。

小野:もちろん日本にはないですよね?そんなところ…。

土橋:ないない。クラブチームが学校なんて持ってないから・・・。

小野:それだけの環境があるってことは、中国は将来のサッカーにかける情熱や今後世界を引っ張って行こうという思いも強いってことなのですか?
選手にしても指導者にしても。

土橋:…。そこは、正直答えは難しい…。
だた優れたハードを作ってもソフトが追い付いていないと感じるよね。それにまだ私も中国サッカーを全て知っているわけではないからね。正確に伝えるのは難しい。

小野:環境は素晴らしいものがあって、サッカーをしている側の情熱でだいぶ左右されると思うけれど…。
サッカーへの情熱ってところで言うと日本と比べてどうなんでしょう…。

土橋:サッカーはみんな好きでしょ。情熱もあると思う。ただサッカーをする環境がまだ中国には少ないみたい。日本では部活動が日本のスポーツを支えている部分が大きいでしょ?その文化が中国にはまだない。
中国人が日本での高校選手権にあれだけの観客が入ってテレビ放送するなんてビックリしたし感動した。と言っていたよ。
それと、日本みたいに街クラブがないと言っていた。グラスルーツがもっと広がって子供達がサッカーに触れる場が増えれば、サッカー熱は高まっていき普及していくと思うな。
人気という面で言うと中国サッカーより日本のJリーグとか日本代表の方が人気みたいだよ。

小野:へ~、意外ですね。
では、現在教えている中国の子供達のサッカーへ対する気持ちは、日本の子供達と比べてどうでしょうか?

土橋:正直目標が明確でない感じはするかな。そういった意味では30年位前の日本みたいな感じ?って言えばいいのかな。
まだ、プロも無くてただ楽しくてサッカーをしてるみたいなイメージ。
それに中国では学歴社会でサッカーなどスポーツは息抜き程度でしか考えられていないのも事実。
日本ではJリーグができるとJリーガーになりたい!という目標ができて、そしたら次はヒデ(中田英寿)みたいに世界で活躍する選手がでてくる。
更にミランやインテル、マンチェスターUなどビッググラブに行く選手が出てきたでしょ。
そういった世界で活躍する選手がいて子供達に夢が身近になって、サッカーへの思いが強くなってきたと思うんだよね
また、日本代表がW杯に出場したことや日本でW杯を開催したことなど日本サッカー協会の取り組みがあって、より目標を持って世界で活躍したいっていう子供達が増えてきたよね。
そう考えると夢や目標がないわけではないけれど日本の子供達に比べると温度差があるかな。
(※土橋氏は、中田英寿氏の韮崎高校サッカー時代の1つ先輩にあたる。)

小野:中国のプロチームは、これから大きく発展していく可能性があるのですね?

土橋:中国でプロになりたいという目標はあると思うけど、その先の魅力がまだまだ少ないから、貪欲さも少ないかな…。
そこにハッキリとした未来がまだ見えてないのが中国の現実ではあるかも。
中国代表がW杯に出場したり世界で活躍する選手が出てきたら変わってくると思うよ。
だから、こんなに良い環境があるから勿体ない。
日本のように育成システムや体制などを、きちんとしたものにしたら、もの凄く飛躍していくと思うよ。
選手のポテンシャルは高いと思うから。人口も多いしね・・・。とにかく伸びしろがすごくある国だよ。
今回、岡田さんからは日本の「育成システム」や「育成の重要性」を伝えていき、チームの強化、結果を残すことが目的なので、そのために私たちが人選されたのだと伝えられたんだ。
だから自分に出来ることを一生懸命やりながら、指導者育成のインストラクター経験も活かしていきたいね。
すぐに結果が出るとは思っていないよ。でも10年後や20年後なのかわからないけれど、あの時、あの日本人たちがいたから今の中国のサッカーがあるんだ。って思ってもらえるようなものを残していきたいな。
自分自身も中国サッカーから沢山のことを学んでいるし、お互いにとって相乗効果になれば良いし、サッカーを通じて日中の架け橋になれたらもっと良いよね!!

小野:良い話じゃ~ん・・・。スケールでっかいな~~。情○大○だね。うん。

土橋 功
インタビュー対象者
土橋 功/Dobashi Isao (1975年生)

甲府市出身
琢美サッカースポーツ少年団→甲府東中学校(Uスポーツクラブ)→韮崎高校→日本体育大学(1年間休学してドイツ留学)→ヴァンフォーレ甲府選手。
ヴァンフォーレ甲府Jrユース監督・ヴァンフォーレ甲府トップチームアシスタントコーチ兼任→
スペイン留学(Real Racing Club de Santander S.A.D)→フォルトゥナSC→教員

47FA指導者育成チーフインストラクター
U12モデル地区トレセンモデルコーチ
現在、中国スーパーリーグ杭州緑城足球倶楽部の育成チームの指導者として活躍中。
日本サッカー協会公認A級保持

インタビュアー
小野 文子/Ono Ayako (1977年生)

韮崎市出身
韮崎西中学校→韮崎高校(アナウンス部全国大会山梨代表)
全国高校サッカー選手権山梨大会会場アナウンサー
→玉川学園女子短期大学幼児教育科→幼稚園教諭。
ヴァンフォーレ甲府スタジアムDJ
UTYQGガール
フリーアナウンサー
プリンセス天功ショー、花子とアンシンポジウム等イベント司会

サッカーバンク編集部
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