山梨県 トピックス 高校サッカー・三人の職人

高校サッカー・三人の職人

世界中をまわっている旅人が、ある町外れの一本道を歩いていると、一人の男が道の脇で難しい顔をしてレンガを積んでいた。旅人はその男のそばに立ち止まって、 「ここでいったい何をしているのですか?」と尋ねた。

「何って、見ればわかるだろう。レンガ積みに決まっているだろ。朝から晩まで、俺はここでレンガを積まなきゃいけないのさ。あんた達にはわからないだろうけど、暑い日も寒い日も、風の強い日も、日がな一日レンガ積みさ。腰は痛くなるし、手はこのとおり」男は自からひび割れた汚れた両手を差し出して見せた。

「なんで、こんなことばかりしなければならないのか、まったくついてないね。もっと気楽にやっている奴らがいっぱいいるというのに・・・」
「大変ですね」 旅人は、その男に慰めの言葉を残して、歩き続けた。

もう少し歩くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会った。先ほどの男のように、辛そうには見えなかった。
旅人は尋ねた。「ここでいったい何をしているのですか?」

「俺はね、ここで大きな壁を作っているんだよ。これが俺の仕事でね。」
「大変ですね」
「なんてことはないよ。この仕事のおかげで俺は家族を養っていけるんだ。ここでは、家族を養っていく仕事を見つけるのが大変なんだ。俺なんて、ここでこうやって仕事があるから家族全員が食べいくことに困らない。大変だなんていっていたら、バチがあたるよ」

また、もう少し歩くと、別の男が活き活きと楽しそうにレンガを積んでいるのに出くわした。
「ここでいったい何をしているのですか?」
旅人は興味深く尋ねた。

「ああ、俺達のことかい?俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!」
「大変ですね」
「とんでもない。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ!素晴らしいだろう!」

~イソップ童話~三人のレンガ職人より~

目的意識なき職人
生活費を稼ぐ目的の職人
世に残る事業、世間に貢献することが目的の職人

毎日同じ仕事をしていてもこれだけ人によって生きる意識が違う。

サッカーの世界も、ビジネスの世界も同様であろう。

ジュニアのサッカークラブを見て廻っている男が、ある街のクラブのグランドに立ち寄ると、監督らしき男がポケットに手を入れて怖い顔をして子供達を怒鳴り続けていた。
その男はその監督らしき男のそばに立ち止まって、
「ここでいったい何をしているのですか?」と尋ねた。

「何って、見ればわかるだろう。大会で優勝するために決まっているだろ。毎日、俺はこの子達を勝たせるために教えているのに、こいつらやる気が感じられないんだよ。あんたにはわからないだろうけど、イライラの毎日なんだよ。優勝でもすればうちのクラブに上手い子も増えるんだけどな」

「なんで、こんなことばかりしなければならないのか、まったくついてないね。もっと適当に教えて簡単に優勝しているクラブがいっぱいあるというのに・・・」

男は、その男に慰めの言葉を残して、歩き続けた。

隣の町に行くと、子供達を教えている別の監督に出会った。 先ほどの監督のように、偉そうにも辛そうにも見えなかった。
その男は尋ねた。
「ここでいったい何をしているのですか?」
「俺はね、ここで子供達にサッカーを教えているんだ。まぁーボールの蹴り方とか戦術とかだね。これが俺の仕事でね」
「大変ですね」
「なんてことはないよ。このクラブの会費のおかげで俺は生活しているからね。俺なんて、ここでこうやって仕事があるから困らない。選手達は俺の大事なお客さんだよ(笑)。嫌われてクラブ辞められたら俺の生活費減るからね。だから親や子供達から嫌われないようにするだけさ」

旅人は、男に励ましの言葉を残して、歩き続けた。

また、隣の町に行くと、別の監督らしき男が活き活きと楽しそうにグランドにいるのに出くわした。
「ここでいったい何をしているのですか?」
男は興味深く尋ねた。

「ああ、俺のことかい?俺は、子供達がサッカーを通じて、自分で人生を楽しめる大人になって欲しいと思っている。もちろん簡単なことじゃないよ。日々真剣勝負だよ。それでも信じている。 そんな子供達が人間として、サッカー選手として誰からも愛される大人になると思っている。 ビジネスでも日本はもちろん、世界でも活躍できる大人になれると確信している」
「だから自分自身も日々研究勉強している」
「大変ですね」
「とんでもない。こんな弱小チームからでも、世界で活躍できる事が証明されたら、俺と同じように挑戦している人達や、地方の子供達に勇気と夢を与えられると思う!素晴らしいと思わないかい!」

男は、その監督にお礼の言葉を残して、また元気いっぱいに次なるクラブを求めて歩き出した。

高校生のみなさん。
日頃の行動も同じではないでしょうか。
目的意識によってサッカーも勉強も楽しくなると思いますよ。
頭で損得を計算するのではなく、こころで動ける人になってください。
こころで動けるようになるとストレスはなくなります。
是非、高校時代に自分のやりたいこと、夢を見つけてください。

「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」 論語
(子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)
よく知る人も、それを好む人には勝てない、好む人も、それを楽しむ人には勝てない。

知識は努力に勝てません。
努力は夢中に勝てません。

 

田畑雅宏

田畑雅宏(52 歳)

1988 年「小淵沢サッカースポーツ少年団」設立と共に監督となり 2002 年迄監督を務める現北杜市にサッカー部がない中学校も数校あった事から同年に峡北地域初のクラブチーム「FC 八ヶ岳」を設立しジュニアユースの育成に力を入れはじめる。2005 年には北杜市のスポーツ文化向上を目指し NPO特定非営利活動法人「八ヶ岳北杜グランデフットボールクラブ」を設立する。現在はヴァンフォーレ甲府と提携し「ヴァンフォーレ八ヶ岳」と名称変更し山梨県のスポーツ文化発展と U12,U15 の育成活動を行っている。

著者のブログ

2005 年からサッカーだけを書き続けている熱いサッカーブログは親と指導者必見です。

「フットボール症候群」

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