高校サッカー・而今(じこん・にこん)
而今(じこん・にこん)とは、今から20数年前に帝京高校サッカー部元監督古沼貞雄先生からお教えいただいたお言葉である。
当時30代の私に、「今、君がやれる事を、今、精一杯頑張りなさい」と教えてくれました。
今でも私の心に染みついている言葉になっています。
是非皆さんにも知って欲しい言葉です。
少し難しいかもしれませんが読んでください。
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而今の山水は古仏の道現成也。
~中略~
学道の人は、後日を待って行道せんと思ふことなかれ。
只、今日今時を過ごさずして、日日時時を勤むべき也。
~中略~
悪にも善にも随うときは、心は善悪につるゝなり。
故にいかにもとより悪き心なりとも、善知識に随ひ良人に馴るるれば、自然に心もよくなるなり。
悪人に近づけば、我心にも初は悪しと思えども、終にその人のこゝろに随ひ、馴るほどにおぼへず、やがて実に悪く成なり。
~中略~
人の心、元より善悪なし。善悪、縁に随っておこる。
正法眼蔵随聞記(しょうぼうげんぞうずいもんき) (岩波文庫)より抜粋。
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鎌倉時代初期の禅僧であり曹洞宗の開祖である道元禅師の言葉である。
修行する人は、後日に修行すると考えてはいけない。
今日、この時を曖昧に過ごさず、その日、その日を、その時、その時を、精一杯勤めなければならない。
悪人でも善人でも、心は善悪の影響を受ける。
そう考えると悪人でも、徳のある人に接していれば少しずつ自然と悪人の心も良くなっていく。
悪人と接していれば、最初は悪い事と思っていても、いつのまにかそれに馴れてしまって悪人になってしまう。
※専門家の解釈は違っているかもしれません。
「而今」という言葉が沢山出てきます。
「而今」とは「今できる事に最善を尽くす」ことであると解釈できます。
意志さえあれば私たち人間は誰でも変わることができることを示唆しているのではないでしょうか。
そのためにも例え小さなことでもベストを尽くす習慣をつけることが大切です。
人は自分の意志で人生を楽しむことができると思います。
その第一歩が今自分にできる事にベストを尽くす事なのです。
私は「自分との約束を守る事から始めよう」と選手達に伝えています。
約束を守るとは、自分で決めた事をやり続ける意志の事、即ち「今できる事に最善を尽くす」ことなのです。
「自分の能力を上げる。そうすれば仲間の為に役立つ事ができる。
自分が取り組める事に努力をしている人達が、力を合わせて、みんなで努力をしているチームが本当の強いチームだ」と伝えています。
そうすることで素晴らしい成果も出るのです。
社会においても同様だと思います。
ひとりが変われば、会社の部署や学校のクラスも変わるかもしれません。
会社の部署や学校のクラスが変われば、会社も学校も変わるかもしれません。
地域も変わって行くと思います。
自分を磨いている人達が、力を合わせて、地域にとって今必要な事をみんなで取り組めば魅力ある地域になると思います。
そういった地域からは有能な人材も沢山出てくると思います。
素晴らしい企業や若者達も沢山移住してくると思います。
そんなの理想論だと思う方もいるかと思います。
評論して動かない人よりも、まずは一歩でも動く人になることです。
私はそう思える人が、より良き人生を作り出せるのだと思っています。
サッカーの指導において、使われている言葉があります。
「認知・決断・実行」です。
これは日常においても同様だと思います。
例えば、
自分は太っていると認知しています。
痩せようと決断します。
それでも多くの方が直ぐに実行しないで明日にしてしまいます。
そして明日になっても実行しない方が多いのです。
大学受験、仕事、人間関係等、人生においても当てはまると思います。
うちの選手達には、「実行する数パーセントに入る人間になろう」と伝えています。
よく試合中にコーチの方が「判断しろ」と選手に言っています。
判断ばかりしていると、ボクシングで言えばノックアウトよりもポイントを稼いで勝利する内容になる確率が高くなります。
判断はとても大切ですし、チームとして勝利の駆け引きを学ぶ上で必要なことであると理解しております。
その上で、私は「決断する」ことがよい選手の条件であると思っています。
判断と決断は似ているようで少し違います。
判断とは様々な条件を踏まえた上でより良き選択をしていきます。
決断は様々な条件を踏まえた上で自分の意志が判断よりも強くなります。
会社で言えば、社員は判断、トップは決断と言ったところでしょうか。
社員は現状における判断であり、 トップは将来の発展も考えた上で決断します。
よって決断は過去の蓄積と未来を踏まえたセンス(感覚的要素)も含まれてきます。
だから選手達には「決断する」事を促しています。
私は育成年代には決断力を磨かせたいのです。
世界的トッププレーヤーは、この決断(センス)がとてつもなく早くて実行もとてつもなく早いのだと思います。
おそらくは「認知・決断・実行」が別々なのではなくて「ひとつ」なのだと思います。
よく、「相手の逆を取れ」と言いますが、 判断だと広いスペースであったりフリーの味方へのパスですが、決断だと狭いスペースのドリブルであったり、狭いスペース側へのシュートもアリなのだと思います。
何故ならば相手の判断のもう一つ先を感覚で決断しているからです。
高校生の皆さん。
サッカーもそうですが、社会においても、人生においても、 毎日が「認知・決断・実行」の連続です。
そこに「而今」があれば最高です。
今できる事に最善を尽くし、良い決断が沢山できる大人に成長して欲しいと願っています。
新しい年度が始まりました。
良い仲間、恩師と巡り会ってください。
そして、私が頂いた言葉をそのまま贈ります。
「今、君がやれる事を、今、精一杯頑張りなさい」 今を楽しんで生きている事に気づく時が訪れることでしょう。

