高校サッカー・価値ある一笑
5月も近づき新一年生も高校生活に慣れた頃でしよう。
新しいコーチが入ったチーム、監督が変わったチームもあるでしょう。
新品のジャージと練習着を身にまとい希望と不安の交差した中で緊張感溢れる新鮮な毎日を送っている事と思います。
そんな「時」の中にいる君は幸せですね。

先日、他競技ではあるが教え子の見舞いに行ってきました。
競技中に大怪我をしてしまい全治5ヵ月の診断。
彼は新3年生、本人曰く高校代表入りの可能性も出てきた矢先の出来事でした。
明るく振る舞ってくれた彼ですが、リハビリも含めるとギリギリ冬に間に合うかどうか。
笑顔の会話が続いていましたが心中はお互い無念に泣いていました。
彼は私に「医師から復帰に9ヵ月かかると言われたけれど僕は7ヵ月で復帰して高校ラストの大会に絶対間に合わせます」と強い決意で語ってくれました。
私に出来ることは次の手術が成功して早く回復してくれることを願うことしかありません。
自分の無力さを感じた瞬間でもありました。
新一年生そして新2,3年生の諸君。
ボールを蹴れるということはなんと幸せなことでしょう。
好きな事がやれる毎日がある君は幸せです。
存在する全てのものに感謝しなければなりません。
先輩や指導者からのパワハラと言う言葉も聞く機会も増えてきました。
入部して直ぐに辞める一年生も残念ながら毎年いるようです。
事情はそれぞれあるのでしょう。
私はプレーヤーとして約45年、指導者として約30年サッカーに携わってきました。
振り返ってみると悔しい事や不条理な事が多かったかもしれません。
それでも当時からサッカーを辞めたいと思った事も考えた事もありませんでした。
この場から逃げない前提の中で今をどう乗り越えるかの連続が続いています。
サッカーはそれだけ魅力があります。
人それぞれの人生です。
それでも1ヵ月程度で辞めてしまう若者達はモッタイナイです。
ボールが蹴れる、練習ができる。
あとは君が与えられた環境をどのように楽しむかです。

私は、サッカーは社会の縮図であり、人生の縮図と思っています。
サッカーも人生も攻守の切り替えの連続です。
喜んだり悲しんだり泣いたり笑ったりの連続です。
作戦タイムもとれません。
ゴールを目指しながら考え動き続けるしかありません。
100㍍走のようにタイム記録で勝敗が決まりません。
内容が良くても試合に負けたり、内容が悪くても勝つときもあります。
逆転満塁ホームランでいきなり4点入ることもありません。
コツコツと1点を積み重ねていくしかないのです。
審判のミスジャッジで負ける時も勝つときもあります。
アディショナルタイムも審判によって違います。 天候に左右される場合もあります。
ゴールが決まるも決まらないも紙一重の連続です。
怪我をするもしないも紙一重の連続です。
試合90分の中でボールに触っている時間は3分もありません。
残り87分間はチームの為に頭と身体を働き続けるしかありません。
技術レベルは普通でもその選手が入ると勝率が上がる場合があります。
技術レベルが高くてもその選手が入ると勝率が下がる場合もあります。
そんなものです。
サッカーも人生も、お互いを尊重するところから始まります。
一人一人に得意不得意、個性があるように、育った環境が違うように、色々な意見や哲学がある中で、各々が役割を担い、ルールの中でサッカーも社会も形成されているのではないでしょうか。
新1年生諸君がまず実践することは、日常の生活習慣を磨く事だと思います。
そうすると自然とサッカーに対する取り組む姿勢も磨かれていくものです。
もしかしたら日常の生活習慣をおろそかにしていてもAチームに呼ばれている1年生もいるかもしれません。
そんな君は本当にアンラッキーです。
知力・体力を付けていないのにエベレスト登山するようなものです。
緩やかな道が険しくなると登り切れなくなるでしょう。
選手達は人間という土台の上でサッカーをしている事を知って欲しいです。
サッカーも人生も一朝一夕で結果を求める対象にしてはいけませんね。
高校生の諸君。
今の勝った負けたではなく、今日の悔しさを糧に、努力して努力して努力して、 卒業時に笑って卒業することを想像してください。
私は入院中の彼が高校ラストのピッチに立つ事を信じています。 ユニフォーム姿で微笑む一瞬をスタンドから見られたら幸せです。
一勝の勝ちより価値ある一笑です。

